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カリフォルニア州の銀行と貯蓄金融機関の株が売られ始めた。 投資家が心配したのは、不況のために西海岸の金融機関が不良債権を抱えて損失を被るだろうという見通しがあったことだ。

商業用、住宅用ともに、不動産貸し付けが問題含みだった。 W銀行は、なかでも商業用不動産担保ローンが最も多いので、売りを浴びたうえに空売りも加わった。
W株の売り建て玉の総額は、一O月だけで七七%も増えた。 ちょうどPが買い始めた頃である。
Pが大株主になったことが明らかになったときに始まって、それから何カ月聞かのW株を巡る闘いは、ヘビー・ウエートのボクシングのようだつた。 一つのコーナーには二億八九OO万ドルを賭けて、大儲けを狙う猛牛(ブル)P。
一方のコーナーには空売りの熊(ベア)の群れ。 この年すでに四九%下げたから、もっと下げるはずと売り浴びせる。
米国一の空売り王といわれるFが、Pの向こうを張っていた。 彼らの資産管理に当たっているダラスの業者、Tは「Wは死んだ鴨だ。
破産するとは言わないが、ティーン・エイジャーだよ」と言っていた。 つまり、株価が二0ドル台を割るという意味だろう。
P証券のアナリスト、Jは「Pは割安株狙いの長期投資家として有名だが、カリフォルニアが第二のテキサスになる可能性あり」と言っている。 彼は、石油価格下落のときにテキサスで銀行が倒産したことを言っていたのである。
またバロンズ誌の記者Jは「Pは、銀行株の底値をさらい続けていると、自分の巨大な資産を、死後に誰が使うのかと心配する必要がなくなるだろう」と言っている。 Pは、銀行業について非常に詳しい。
一九六九年にPは、Iの九八%の株式を買い入れている。 一九七九年に銀行持株法が成立し、Pはその持株の処分を命じられたが、それまではPは毎年、同行の業績をPの年次報告書に記載していた。
同行は、P傘下の子会社群の一つに加えられていたのだ。 Jが保険業の核心について彼の理解を助けたと同様に、I会長、Jが彼に銀行業務を教えた。
彼が学んだことは、経営者が責任を持って貸し出しを行ない、費用の節約に努める限り、銀行は儲かるものだということだった。 Pは、次のように述べている。

「われわれの経験からすると、すでに金喰い虫的な経営をしている企業のマネジャーほど、新しいコストを加える方法を見つけるのに冴えた手腕を見せてくれることが多い。 一方、経費を切り詰めてきた企業の経営者は、すでに同業他社に比べて、低コストであるにもかかわらず、経費を節減する新しい方法を発見し続ける傾向がある。
この後者の能力を、Jほど発揮した者を私は知らない」WはKではない、とPは言う。 ほとんど、どのような状況のもとでも、Kの事業が行き詰まるということは考えられない。
しかし、銀行業は違う。 破産する可能性があり、また実際に破産している。
銀行破産の原因の多くは経営のミスだというのである。 ほとんどの場合、マネジャーが普通なら検討にも値しないと考えるような案件、について貸し出しを行なうようなときに、銀行は破綻する。
資産勘定が自己資本の二O倍というのは、銀行業界では一般的な状態と三一悶える。 この状況下で、経営者の愚かな行為が、それに関連する資産の額がいくら小さくても、自己資本を食い潰してしまいかねない。
しかし、それでも銀行株がよい投資対象になることは不可能ではないとPは言う。 もし経営陣がその責務を全うすれば、銀行は二O%の株主資本利益率を上げることができる。
この率は、K社やJ社の場合より低いが、ほとんどの企業の平均より高い。 銀行であれば、業界N01でなくてもよい。
重要なのは、資産、負債そして費用をいかに管理するかということだ。 保険と同じく銀行もありきたりな商品を扱う企業に属する。

だから、よく知られているように、この種の企業では、経営陣の手腕、行動が、その業績を最もよく導くものとなることが多い。 この観点から、Pは、銀行業界ではベストの経営陣を選んだのである。
一九八三年から九O年までの聞は、平均の総資産利益率が一・三%、株主資本利益率は一五・二%を記録した。 一九九O年には、総資産五六O億ドルで、全米一O位の規模になっていた。
Rは、Pが称賛する多くの経営者と同様に合理的だった。 彼は、まだ株主に報いる施策、つまり自社株買い戻しプログラム、あるいは特別配当などを実施してはいなかった。
しかし彼は、W銀行を株主の利益のために経営していることで定評があり、C/ABCのMのように、経費節減ということにかけては伝説的な人物になっていた。 いったん節限することに決めた経費を増やしたことはかつてない。
彼は、常にW銀行の利益率を上げる方法を探していた。 銀行の営業効率を計るときに、アナリストは、ネットの金利収入に対する支払い金利を除く経費の比率を見ることがある。

つまり、純金利収入に対する営業費用の比率である。 W銀行の営業効率は、ファースト・インターステーツやパンク・オプ・アメリカに比べて二0−三O%も上回っている。
ライチャードは、一般の起業家が自分の会社を経営するようなやり方で、W銀行を経営している。 彼は、次のように言っている。
「われわれは、この会社を一般企業と同じように経営している。 二足すこはあくまで四で、七でも八でもない」PがW株を買っていた一九九O年末現在で見ると、同行の貸し付けに占める商業用不動産担保貸し付けの比率は、圏内の有力銀行のなかでも最高であり、その総額一四五億ドルは、自己資本の五倍であった。
カリフォルニアの不況がさらに深まっているときだったため、アナリストは、その貸し付けの大きな部分が問題含みだと考えた。 一九九O年と九一年に、同行の株価が下がった理由はこれだった。
FSLIC(連邦貯蓄貸付保険公社)の問題が発生して、銀行監督官がW銀行の貸し出しリストの厳しい監査を開始した。 その結果、同行は、一九九一年に一三億ドル、九二年に一二億ドルの貸し倒れ準備金を積むように求められた。
準備金は四半期ごとに積むことになるので、それが公表されるごとに、投資家はあまりよい気持ちはしない。 しかし、同行は、一時に巨額の貸し倒れ準備金を積むよりは、二年間に繰り延べて分割して積むことにした。
投資家は、同行が、果たして問題ローンを解消できるのか、と疑いを持ち始めていた。 一九九O年、PがW株の保有を公表した後に、株価は一時高騰して九八ドルをつけた。
Pの評価益は二億ドルにのぼったが、一九九一年六月に、同行が再び貸し倒れ準備金を積み増したと発表したのを機に株価は暴落。 二日間で二二ドル下がり、七四ドルになった。
一九九一年の第四・四半期に株価はいくらか戻したが、同行が準備金の積み増しをしなければならないことは明らかなことだった。 その年末、株価は五八ドルで終わった。
ローラー・コースターのように上げ下げしたPの投資も、結局、往って来いに終わった。 Pは、「私はカリフォルニアの不況の厳しさと、この銀行が持つ不動産関連の問題を低く見積もり過ぎていたようだ」と白状している。

一九九O年、W銀行は前年比一八%増の七億二OO万ドルの利益を上げた。 九一年には、貸し倒れ準備金もあって、利益は一二OO万ドルに落ちた。

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